FA機器・伝導機器の幅広い取扱いから最適なエンジニアリングを実施
COLUMN
人手不足の深刻化や多品種少量生産への対応を背景に、製造現場では「協働ロボット」への関心が急速に高まっています。安全柵を設けずに人のすぐ隣で稼働できることから、既存の生産ラインを大きく変えずに自動化を進められる手段として注目されています。
一方で、機種の選定や導入後の運用体制を誤ると「導入したものの現場で使われていない」という状態に陥りかねません。本記事では、協働ロボットの基礎知識から産業用ロボットとの違い、用途、選び方、導入の進め方までを解説します。
協働ロボットとは、安全柵で囲うことなく、人と同じ空間で協調して作業できるロボットの総称です。従来のロボットが「人を近づけないこと」で安全を確保していたのに対し、協働ロボットはロボット自体に安全機能を備えることで、人との共存を可能にしています。
多くの機種はアーム本体を手で動かして動作を教え込む「ダイレクトティーチ」に対応しており、専門的なプログラミング知識がなくても比較的扱いやすい点も特徴です。
労働安全衛生規則第150条の4では、産業用ロボットの可動範囲内で作業を行う場合、柵や囲いを設けるなどの措置を講じることが原則として義務付けられています。ただし、定格出力80W以下のロボットはこの規制の対象外とされてきました。
その後、2013年に厚生労働省から通達が出され、国際規格に適合し、リスクアセスメントによって労働者に危険が生じるおそれがないと評価できる場合には、定格出力80Wを超えるロボットであっても柵を設けずに人と同じ空間で稼働させることが可能になりました。この規制の明確化が、協働ロボット普及の大きな転換点となっています。
人とロボットが安全に共存するための方式は、国際規格において次の4つに整理されています。
現在市販されている協働ロボットの多くは、主に「出力・力の制限」によって安全性を確保しています。
協働ロボットと従来型の産業用ロボットは、目的も得意分野も異なります。主な違いは次のとおりです。
| 比較項目 | 協働ロボット | 産業用ロボット |
|---|---|---|
| 安全柵 | 条件を満たせば不要 | 原則として必要 |
| 可搬質量 | 数kg〜20kg程度が中心 | 数kg〜数百kgまで対応 |
| 動作速度 | 安全確保のため抑えられる | 高速動作が可能 |
| 設置面積 | 小さく済む | 柵を含めた広い面積が必要 |
| 教示のしやすさ | ダイレクトティーチ対応で扱いやすい | 専門的な知識が必要 |
| レイアウト変更 | 架台ごと移設しやすい | 移設の負担が大きい |
| 向く生産形態 | 多品種少量・変種変量 | 少品種大量生産 |
重要なのは、どちらが優れているかではなく、対象となる工程に適しているかどうかです。同じ製品を大量に、かつ高速で生産する工程であれば産業用ロボットが有利ですし、人の作業と混在しながら段取り替えが頻繁に発生する工程であれば協働ロボットが力を発揮します。
協働ロボットは、既存設備を大きく作り替えることなく後付け(レトロフィット)できる点が大きな魅力です。代表的な用途を紹介します。
マシンテンディング(工作機械へのワーク着脱) NC旋盤やマシニングセンタの前に設置し、素材の投入と加工品の取り出しを自動化します。機械を入れ替えることなく自動化でき、夜間や休憩時間の連続運転による稼働率向上が期待できます。
パレタイジング・搬送 完成品の箱詰めやパレットへの積み付けなど、繰り返しが多く身体的負担の大きい作業を代替します。腰痛リスクの低減にもつながります。
ネジ締め・組立・圧入 一定の力で正確に繰り返す作業はロボットの得意分野です。作業者による品質のばらつきを抑えられます。
外観検査・測定 カメラやセンサーと組み合わせ、ワークを持ち上げて多方向から撮像するといった検査の自動化が可能です。
溶接・接着剤やシール材の塗布 熟練者に依存しやすい工程を安定させ、技能承継の課題への対応にもつながります。
期待だけで導入を進めると、想定した効果が得られないことがあります。次の点は事前に確認しておきましょう。
可搬質量とリーチには制約がある 重量物や大型ワークの搬送には向きません。ハンド(把持部)の重量も可搬質量に含まれるため、実際に持てるワーク重量はカタログ値より小さくなります。
タクトタイムが人より遅くなる場合がある 安全確保のために動作速度が制限されるため、単純な速さでは人の作業に及ばないケースもあります。ロボットの価値は「速さ」よりも、休憩なく一定品質で稼働し続けられる「安定性」にあると捉えるべきです。
「協働ロボットだから安全柵は不要」ではない 柵なしでの運用にはリスクアセスメントの実施が前提となります。搬送するワークやハンドに鋭利な部分や突起がある場合など、条件によっては安全機器や部分的な防護が必要になります。
本体よりも周辺設計が成否を分ける ロボット単体を導入しただけでは自動化は完結しません。ハンド、治具、ワークの供給方法、工作機械やPLCとの信号連携といった周辺の設計こそが、実用に耐えるかどうかを決定づけます。
運用側の準備も必要 産業用ロボットの教示や検査などの業務に従事する場合、特別教育の受講が求められます。誰が日常的に操作・調整するのかも、導入前に決めておく必要があります。
協働ロボットは国内外の多くのメーカーから発売されており、それぞれ得意分野や思想が異なります。自社に合った1台を選ぶための着眼点を整理します。
ワーク重量にハンドの重量を加えた値で判断します。また、ロボットを設置する位置から、供給位置・加工機・排出位置までの距離が動作範囲に収まるかを確認します。
粉じん、切削油のミスト、洗浄水などが想定される環境では、防塵防滴性能が必要です。食品工場やクリーンルームであれば、対応仕様の機種を選定します。
工作機械やPLC、周辺装置との信号連携が可能かどうかは、自動化の完成度を左右します。既存設備の型式や制御方式によって、接続に必要な工事の内容も変わります。
「誰が動かすのか」を起点に選ぶことが重要です。現場の作業者が自ら段取り替えできる操作性であれば、ロボットは活用され続けます。
メーカーによって、立ち上げ支援、部品供給、保守対応の体制は異なります。特定メーカーの製品だけを扱う相談先では、どうしてもその範囲での提案になりがちです。複数メーカーの製品を比較検討できる立場に相談することで、工程に本当に合う機種を選びやすくなります。
協働ロボットは購入して終わりではなく、止めずに使い続けて初めて投資を回収できる設備です。現場でつまずく典型的なパターンは、「選定を誤り工程に合わなかった」ケースと、「導入後に不具合が起きても相談先がない」ケースの2つに集約されます。
ロボットも機械である以上、経年による劣化は必ず発生します。減速機のグリス劣化、モーターの絶縁劣化、エンコーダーのバックアップ電池の消耗、可動部ケーブルの屈曲疲労などは、稼働時間の蓄積とともに顕在化します。異音や振動、温度上昇といった予兆を捉えて計画的に整備することが、突発停止による生産ロスを防ぐ鍵となります。
FDエンジニアリングサービス(藤川伝導機)は、ロボットをはじめとする電動機器メーカーの販売代理店として複数メーカーの製品を取り扱っています。そのため、特定メーカーの製品ありきではなく、お客様の工程や課題を起点に最適な機種をご提案することが可能です。
さらに、モーター・減速機の修理やオーバーホールを手がけてきた電動機器の専門企業として、機種の選定・販売からシステムの構築、導入後の保守・メンテナンスまでを一貫してサポートできる点が私たちの強みです。導入時の相談先とトラブル時の相談先が同じであることは、現場にとって大きな安心につながります。

NC旋盤のワーク供給に長年使用されてきたロボットの更新をご依頼いただいた事例です。
ご要望は単なる老朽化対応ではなく、「自動化するワークの種類を増やしたい」というものでした。限られたスペースの中で、当社は不二越製ロボット「MZ25」をご提案。メーカーと同行のうえ現場でタクトタイムを算出し、ラフスケッチを交えて導入イメージを共有しました。
ロボット本体だけでなく、ワークストッカー、大型部品に対応するスライダー、安全柵に至るまで一貫して設計・施工。大小幅広いワークに対応するため、ハンド設計を特に作り込んだのがポイントです。結果として、装置全体のタクトタイムが改善され、自動化できるワークの対応幅も大きく広がりました。
▶ NC旋盤へのワーク供給用産業ロボットのレトロフィット事例はこちら

化学品メーカー様へ、樹脂シートのカット装置を納入した事例です。仕様をヒアリングしたうえで、不二越製「MZ12」を採用しました。
この事例で注目いただきたいのは、工場内で使用するロボットのメーカーを揃えるという視点です。同一メーカーで統一することで、保守部品の管理を集約でき、メンテナンス面での負担とコストを抑えられます。装置単体の価格低減にとどまらず、工場全体の保守性向上につながった事例です。
「どの工程から自動化すべきかわからない」「そもそも自社の工程に協働ロボットが向いているのか判断できない」といった段階からのご相談も歓迎しております。現場の課題をお聞かせいただければ、最適な自動化の進め方をご提案いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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